事業成果物名

2012年度 鉄道による低炭素社会の実現に向けた研究推進に関する報告書

団体名

事業成果物概要

1.業務の目的

近年、地球環境問題への対応という点から、鉄道はCO2排出量の少ない輸送機関として世界的な注目を集めている。このような背景から、米国を始めとして、世界各国で鉄道網の整備が国家規模のプロジェクトになっている。このような状況下、日本の高速鉄道システムの比較優位性を整理しつつ、環境負荷の軽減、沿線開発や経済面、旅客流動や都市間交流に与える影響といった要素を考慮しながら各国における交通体系の現状や課題を分析した上で、各国の関係者を対象に我が国の鉄道システムに関する啓蒙活動を国内の関係者と共同で実施することにより鉄道への理解を深め、世界規模で鉄道網の構築を検討する機運を高めることを目的とする。

2.業務活動の方法及び項目

(1)業務の進め方
インドにおける交通体系の現状や課題を踏まえた高速鉄道導入効果については、海外の研究機関等と共同で研究を実施した。欧州(イタリア)における高速鉄道整備やアジア(ミャンマー)における鉄道改善については、日本の鉄道システムの比較優位性を整理する一環で当機構が単独で調査・分析を実施した(一部調査支援業務の委託あり。)
 これらの成果を踏まえた我が国の鉄道システムに関する啓蒙活動については、国土交通省、外務省、経済産業省、海外鉄道推進協議会、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)との共催で、インド共和国グジャラート州・アーメダバードにおいて官民合同の高速鉄道セミナーを開催した。本セミナーには、モディ・グジャラート州首相をはじめとする現地の要人の挨拶・講演、日本の官民関係者のプレゼンテーション等を盛り込むとともに、日本関係者からのパネル展示も行われた。この他、海外で開催された交通関連学会における発表を行った。

(2)業務項目
本年度の業務項目は以下の通りである。
① タイの高速鉄道計画に関する調査・分析
② インドにおける高速鉄道導入効果に関する研究
③ 欧州(イタリア)における高速鉄道の整備に関する調査・分析
④ アジア(ミャンマー)における鉄道の改善に関する調査・分析
⑤ 以上の成果を踏まえたセミナー等の開催

3.業務の内容

ここでは、報告書にまとめた各業務の内容、及び啓蒙活動について紹介する。

(1)タイの高速鉄道計画に関する調査・分析
タイについて、交通体系の現状や課題の分析、高速鉄道の整備方針、整備へ向けた実態・課題等の調査・分析、高速鉄道整備による交通体系への影響の分析等を実施した。

(2)インドにおける高速鉄道導入効果に関する研究
これまでの研究成果を踏まえつつ、インドの特定区間(Ahmedabad-Mumbai-Pune間)等に高速鉄道を導入した場合の環境負荷の軽減効果、沿線開発や雇用等の経済面でもたらす効果、交通体系の変容(航空・自動車からのシフト)の効果、旅客流動や都市間交流に与える影響の分析を実施するとともに、当該区間について旅客需要の実態につき調査を実施した。
 これらの調査・分析内容については、インド高速鉄道セミナーにおいて適宜当機構及び現地関係者よりプレゼンテーションを行った。

(3)欧州(イタリア)における高速鉄道の整備に関する調査・分析
 日本の鉄道システムの比較優位性を整理するための対象として、欧州(イタリア)における高速鉄道整備の現状や課題について、現地調査等を踏まえて考察した。日本の鉄道システムの比較優位性の整理の内容については、交通関連学会における発表等の際に活用した。

(4)アジア(ミャンマー)における鉄道の改善に関する調査・分析
 欧州(イタリア)に加え、日本の鉄道システムの比較優位性を整理するための比較対象として、ミャンマーにおける鉄道の現状及び課題について調査・分析するとともに、改善方策及び日本が支援できる事項等について提言を実施した。

(5)以上の成果を踏まえたセミナー等の開催
以上の成果を踏まえたセミナー、ワークショップの開催の概要は以下のとおりである。
○インド高速鉄道セミナー(2013年2月)
本セミナーには、日本側から国土交通省や民間各社等の運輸関係者、インド側からグジャラート州首相等が来賓として出席し、合計で約250名の関係者が参加した。挨拶者、来賓、発表者、パネル展示出展者は以下の通りである(肩書、所属等はセミナー開催当時のもの。)。
主催者挨拶:
・ 梶山弘志 国土交通副大臣
・ 大橋忠晴 海外鉄道推進協議会副会長/川崎重工業株式会社取締役会長
・ 鷲頭 誠 運輸政策研究機構副会長/国際問題研究所長
来賓挨拶
・ ラジーヴ・ジョティ  CII鉄道部門前会長
・ M.S.マスール    インド鉄道省局長
・ ナレンドラ・モディ  グジャラート州首相
発表者
・ 藤井直樹 国土交通省大臣官房審議官(鉄道)
・ 石司次男 東日本旅客鉄道株式会社代表取締役副社長
・ 高津俊司 日本コンサルタンツ株式会社代表取締役副社長(技術本部長)
・ 近藤光洋 川崎重工業株式会社理事 車両カンパニー営業本部長
・ 光冨眞哉 株式会社日立製作所 交通システム社CSO
・ 小川真一郎 株式会社東芝 鉄道・自動車システム事業部 鉄道システム統括部 海外事業推進責任者
・ 山部真司 三菱エレクトリック・インド社 社長
・ 高田陽介 運輸政策研究機構 国際問題研究所 国際業務室長
・ サルボジット・パル TERI(The Energy and Resources Institute)準フェロー
閉会挨拶
・ ピーユーシュ・シャー CIIグジャラート州評議会委員長
 パネル展示会場
・ (鉄道事業者)東日本旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社
・ (鉄道車両・機器・信号メーカー;50音順)川崎重工業株式会社、株式会社京三製作所、KYB株式会社、新日鐵住金株式会社、株式会社東芝、ナブテスコ株式会社、日本車輌製造株式会社、日本信号株式会社、株式会社日立製作所、三菱重工業株式会社、三菱電機株式会社
・ 国土交通省

4.事業の成果、達成状況
本事業の最終年度である3年目の2012年度は、以上のとおり、各国関係者を対象に、高速鉄道セミナーの開催や交通関係学会等への参加及び発表等を通じて、取り組んできた調査研究等に関する啓蒙活動を実施した。当該年度に取り組んだ各国においては、鉄道による低炭素社会の実現に向け、日本の鉄道システムへの各国関係者の理解の向上及び啓蒙活動等の結果、各国で鉄道網の構築を検討する機運を高めることに繋がり、所期の事業目標を達成したと考える。
報告書名: 鉄道による低炭素社会の実現に向けた研究推進 報告書
本文:A4版 396頁

報告書目次:
第1章 タイの高速鉄道計画
第1節 研究の目的
第2節 タイの交通機関
第3節 タイにおける鉄道輸送
第4節 タイにおける高速鉄道の可能性
第5節 タイにおける高速鉄道システム計画の進展
第6節 想定される高速鉄道路線の潜在的可能性
第7節 要約と結論
第8節 参考文献
第2章 インドにおける高速鉄道導入効果に関する研究
第1節 はじめに
第2節 Ahmedabad-Mumbai-Puneコリドーの概要
第3節 Ahmedabad-Mumbai-Puneコリドーの交通の特性
第4節 Ahmedabad-Mumbai-Puneコリドーの旅客実態調査
第5節 Ahmedabad-Mumbai-Puneコリドーにおける高速鉄道導入効果分析
第6節 Ahmedabad-Mumbai-Puneコリドーのまとめ
第7節 Chennai-Bangalore-Coimbatoreコリドーの概要
第8節 Chennai-Bangalore-Coimbatoreコリドーの交通の特性
第9節 Chennai-Bangalore-Coimbatoreコリドーの旅客実態調査
第10節 Chennai-Bangalore-Coimbatoreコリドーのまとめ
第3章  イタリアにおける高速鉄道の運行と整備の状況
第1節 概況
第2節 イタリアにおける鉄道政策の概要
第3節 高速鉄道に係るこれまでのプロジェクトの概要
第4節 FSグループについて
第5節 イタリア高速鉄道駅の概況
第6節  NTV社の設立と高速鉄道運行事業者・各モード間の競争の概況
第7節 新たな高速鉄道整備の動き
第4章 ミャンマー鉄道改善検討調査
第1節 ミャンマー鉄道の改善検討に当たっての重点事項
第2節 ミャンマー鉄道の現地調査から見えてきた課題
第3節 ミャンマーの鉄道に係る具体的な改善提案
第4節 ミャンマーの鉄道に関して日本として可能な支援
附録A インド高速鉄道セミナー
附録B 海外発表論文
附録C ミャンマー現地調査結果


【担当者名:石谷俊史】
【本調査は、日本財団の助成金を受けて実施したものである。】

助成機関

事業成果物種類

報告書

事業成果物

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2012年度 鉄道による低炭素社会の実現に向けた研究推進に関する報告書

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