事業成果物名 |
2014年度 欧州造船業概況調査
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事業成果物概要 |
本稿は、欧州造船業について最近の傾向、展開に焦点をあてつつ、概観するものである。
4 部構成となっており、第1 部では世界造船業の現在のポジションについて、第2 部では欧州造船業界について概観する。第3 部では欧州主要造船国に焦点をあて、第4部では欧州における短期的な見通しを述べている。 2005-2008 年の受注ブーム以降、世界の造船業は、新造船需要が下向きに調整されたことで、建造能力の大幅な削減を経験した。新造船建造量は、2010年に建造サイクルの頂点を迎えた後に減少を続けているが、2013 年には、1)船価下落、2)環境配慮型船舶に対する関心の高まり、3)プライベート・エクイティ企業による投資の増加、を理由として世界受注が伸びを見せ、受注残減少に歯止めがかかった。しかし、2014 年には受注レベルが再び減少し、今後の見通しは相変わらず厳しいものとなっている。船舶に関する環境規制のインパクトは、船主の意思決定に影響を及ぼし続けており、その傾向は特に排出規制海域(ECA)における船舶の運航時間が長い部門で顕著である。 新造船建造量は、欧州造船業界では1970 年代から減少している。欧州造船業はかつて世界造船能力の大半を占めていたが、2014 年の建造量に欧州が占めた割合はわずか6%(180 万GT)に過ぎない。ただしドル単位では11%だった。2014年に欧州造船所が引き渡した292 隻のうち、26%はトルコの造船所が建造した。 第2 位はオランダで引き渡し全体の24%を占める。1996 年は132 ヶ所の欧州造船所が引き渡しを行ったが、その数は2014 年には70 ヶ所にまで落ち込んでいる。欧州で現在受注残がある造船所は96 ヶ所で、そのうち上位10 位までの造船所が受注残合計の40%を占めている。 2014 年、欧州造船所は168 隻の新規受注を獲得した。欧州は客船部門で優越的な立場にあるが、全般的には価格で競争する戦略から、先進的技術ソリューションを武器とした国際的な競争を目指す戦略へのシフトが図られている。これはすなわち、コスト高ながら建造量は比較的少ない市場を創りだすことである。欧州造船所は、特にオフショア施設用の特殊船部門などニッチな船舶の市場において市場シェアを維持している。 欧州内の造船業界を見ると、西欧から東欧へのシフトが見られる。ルーマニア、ポーランド、トルコの造船所が、西欧の大手造船所に比べても品質、価格の両面でより競争力をつけている。 こうしたことから、欧州市場内における興味深いシフト(オフショア船部門が建造の中心となってきていることや西欧から東欧へのシフトなど)はあるものの、欧州造船業界が今後世界市場シェアを伸ばすことはありえないと見られる。 しかし、より複雑な技術を要する特殊船に対する需要は継続して上昇していくことが見込まれており、また欧州は客船部門でほぼ独占状態にあることから、欧州の世界市場シェアは安定局面に入ったと思われる。本稿の図4.3 で詳細を示したように、欧州造船業界の年間建造量は今後2年間でわずかな減少を記録し、200 万CGTを切る程度となると現在予測されている。これは世界市場における引き渡しのシェアで5%に相当する。 欧州造船所がオフショア部門により集中の度合いを高めていることから、現在の石油価格下落は大きなリスク要因となる可能性が高い。石油価格はオフショア部門の投資に重要な意味を持つからである。ブレント原油価格は2014 年夏以来、57%下落して1 バレル53 ドルまで低下した。2009 年に同様の原油価格下落が発生した際は、オフショア向け船舶の建造は前年比で30%低下しており、2015年にも同様に大規模投資削減が行われるというのが業界の一致した見方である。 ユーロは昨夏より世界の主要通貨に対して下落しており、欧州製の商品は他地域の消費者にとって相対的に安くなった。欧州造船所の受注は欧州の船主からのものが大半であるが、このユーロ安は、ある程度輸出向けの受注増加を促進すると見られる。 |
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事業成果物種類 |
報告書
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事業成果物 |
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