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2020年度船舶関係諸基準に関する調査研究事業報告書
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事業成果物概要 |
事業成果物概要
1.1 IMO GHG削減戦略への対応に関する調査研究 本調査研究プロジェクトでは、GHGの2030年目標(効率40%改善)の達成に向けて、我が国等が提案した既存船の燃費性能規制(EEXI規制)及び燃費実績(CII)格付け制度からなる短期対策を導入するための海洋汚染防止条約(MARPOL 条約)附属書 VI の改正案について検討し、第7回GHG中間作業部会(ISWG-GHG7)に対して18か国・1団体とともに提案を行った。また、短期対策の実施細則(ガイドライン)に関する通信部会(CG)について、中国及びECとともに共同コーディネータを務め、ガイドライン案を最終化し、MEPC76に提出した。また、2050年目標(GHG総量50%削減)に向け、従来燃料と比較して高コストとなる脱・低炭素燃料の導入促進策の検討に資することを目的として、他分野における代替燃料や再生可能エネルギーの利用拡大に向けた官民の取組について情報収集を行った。 1.2 船舶の省エネ性能向上のための技術基準の検討に関する調査研究 本調査研究プロジェクトでは、EEDIフェーズ4に関して、IMO GHG削減戦略の2050年目標(GHG総量50%削減)を踏まえつつ、必要な技術的事項(推進システム、燃料の転換等)を検討するとともに、CGについては、コーディネータとして各国の意見を集約し、同CGの最終報告を取りまとめ、MEPC76に提出した。また、最低出力規制及び非常用出力に関し、MEPC75で設置された我が国をコーディネータとするCGにおいて、暫定最低出力ガイドライン改正案及び新造船EEDIに関する出力制限・非常用出力の導入のための作業計画案を最終化し、コーディネータとして同CGの報告を取りまとめ、MEPC76に提出した。さらに、風力推進システムによる効率改善効果をEEDIへ反映するため、既存提案をベースとした関連ガイダンスの改正案をMEPC76に提出した。 1.3 海洋水質・生態系保護基準整備に関する調査研究 IMOにおいては、船舶に起因する海洋水質・生態系への影響にの観点に基づく新たな規制の可能性に関する議論が行われている。主な例として、2020年2月の汚染防止・対応小委員会第7回会合(PPR 7)では、排出規制排ガス浄化システム(EGCS、いわゆるSOxスクラバー)からの排水による環境影響についての議論や、船体付着生物管理ガイドラインのレビューに着手している。 以上の背景を踏まえ、本調査研究プロジェクトにおいては、IMOでの海洋水質・生態系保護基準に関する審議に対応するため、バラスト水管理条約の実施・改正、SOxスクラバー排水の環境影響、船体付着生物管理ガイドラインのレビュー、船舶における汚水処理規則見直しの各テーマについて、我が国の実態を踏まえた合理的な基準となるようMEPCやPPR、CGへの対応方針策定に資する活動を行うとともに必要な調査研究を行った。 1.4 水中騒音対策検討に関する調査研究 2021年度のMEPCでは審議が開始されて本件に関する議論が活発化する見込みであり、IMOでの各会議では、船舶を騒音源の一つとして問題視しており、その影響が十分に評価されていないにも関わらず、今後の議論の行方次第では、船舶の騒音対策を講ずべきとする方向に議論が発展することが懸念される。 そのため、船舶水中騒音に係る定量的なデータを取得し、科学的根拠に基づく議論を行えるよう伊豆大島沖における船舶からの水中騒音を計測し分析する調査研究、水中騒音低減のための国内外技術及び水中騒音ガイドラインのレビューに関する調査研究を実施した。 1.5 自動運航船の開発・実装に係る制度の研究に関する調査研究 2018年5月の第99回海上安全委員会(MSC99)から検討が開始されたことを踏まえ、本調査研究プロジェクトにおいては、自動運航船を実現するために必要な制度等構築のための課題やその対策について検討するため、諸外国の自動運航船に係る開発状況や制度の調査、自動運航船の仕様を記載するコンセプトオブオペレーションの調査、自動運航船に使用される可能性のあるセンサ技術に関し我が国企業の技術優位性に関する調査を実施した。 1.6 航海設備近代化に伴う関連基準の検討に関する調査研究 IMOでは、2009年のMSC86よりGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)の維持及び安全性の向上を目的として、同システムの見直し・近代化の検討が進められており、2024年のSOLAS条約改正に向けて作業が進められている。 本調査研究プロジェクトでは、2019年度に引き続き、IMO及びIMO/ITU合同専門家会合における関連議題について包括的(SOLAS条約、関連性能要件改正等)に議論し、国内意見の集約及び調整を実施した。 1.7 ガス燃料船・新液化ガス運搬船基準の策定に関する調査研究 2015年6月に開催されたMSC95において、天然ガスを燃料とした船舶の安全基準(IGFコード)が採択された。また、現在、LNG以外の低引火点燃料(水素燃料電池及び液化石油ガス(LPG)等)を使用する船舶の安全性に関し、貨物運送小委員会(CCC)の会合及びE-mailベースの通信部会であるコレスポンデンスグループ(CG)での検討が行われている。 本調査研究プロジェクトにおいては、低引火点燃料について、2019年度に引き続き、IMOでの議論に我が国の知見を反映すべく、国内関係業界の意見を集約し、CGへの対応を行った。 この他、我が国が2020年3月に取りまとめた「国際海運のゼロエミッション実現に向けたロードマップ」において、アンモニア燃料船、水素燃料船等が2050年目標達成に向けたコンセプト船として掲げられており、当該目標に向けて、これら船舶の2028年の実船投入が必要とされている。しかし、アンモニアや水素といった代替燃料については、国際的な安全要件が存在していない。一方、国内外で代替燃料を使用した船舶の建造に向けた動きが活発化しており、従来船と同等の安全性を確保するための国際的な安全要件策定のニーズが高まっている。このため、本調査研究プロジェクトの下に「代替燃料ワーキンググループ」を設置し、アンモニア燃料船、水素燃料船の国際的な安全要件策定に向けた調査研究を実施した。 1.8 目標指向型復原性基準の策定に関する調査研究 IMO船舶設計・建造小委員会(SDC)において、第二世代非損傷時復原性基準の策定のためのCGのコーディネータを日本が継続的に担当しており、本基準を合理的なものとするべくCG及びSDCでの議論をリードしている。 本調査研究プロジェクトでは、我が国意見の反映を図るため、各種基準及びそれらの合格判定基準値策定のための試計算並びに模型実験、加えて第二世代非損傷時復原性基準において基準を満足できない船舶に導入が予定されている運航制限及び操船ガイダンスの技術的検討を調査研究として実施し、この成果を、CGの議論へ発信した。 2020年11月に開催されたMSC102において、第1段階基準、第2段階基準、直接復原性評価、運航制限・ガイダンスを含む、第二世代非損傷時復原性基準の暫定ガイドラインが承認された。 1.9 救命設備基準改正検討に関する調査研究 2019年6月に開催されたMSC101にて、欧州諸国及びECより、救命胴衣の復正性能を改善するための国際救命コード(LSAコード)等の試験基準を改正する新規作業計画が提案され、これが合意された。 この救命胴衣の基準改正の提案は、救命胴衣を着用していたにも係わらず船員が溺死した事故を受けて提案されたものであり、現状は水着を着用して行われる救命胴衣の復正試験(水中でうつ伏せの状態から自動的に仰向けに浮き上がる救命胴衣の能力を評価する試験)を、衣服を着用した状態で実施するよう試験要件の改正を提案するものであった。 この衣服を着用して実施する試験については、衣服の形状・素材の差異による試験結果の再現性の低さが懸念されている。そのため、衣類を着用した条件下の復正試験を実施し、その復正試験の再現性の問題を明らかにした。更に、より合理的な試験方法の開発に繋げるため、船舶の復原性評価計算を用いた衣服のモデル化を検討し、計算結果と人体模型による試験結果の比較を行った。更に救命いかだの換気性能の評価方法を検討するために、実物の救命いかだ内にCO2を投入し、自然換気による濃度低下を計測することで、いかだの換気量を評価する調査を実施した。 1.10 各国提案の評価及び日本提案のフォローアップ(IMOフォロー) a) 防火 2020年11月に開催されたMSC102の防火設備関連議題及びRORO旅客船の火災安全要件の見直しに関するコレスポンデンス・グループ(CG)の審議への対応の検討を実施した。 SSE小委員会にて審議されるRORO旅客船の火災安全要件の見直し作業、陸電装置の安全のためのガイドライン策定の作業及びドライケミカル粉末消火装置の承認ガイドライン改正の審議に特に対応するため、それぞれ「RORO旅客船火災安全WG」、「陸電装置に係わる基準検討WG」及び「ドライケミカル粉末消火装置WG」を設置し、CG及びIMOにおける我が国対処方針の検討を、国内関係者と実施した。 b) 船上揚貨装置及びアンカーハンドリングウィンチ 2020年11月に開催されたMSC102の揚貨装置関連議題及びアンカーハンドリングウィンチのためのガイドライン案に関するコレスポンデンス・グループ(CG)の審議への対応の検討を国内関係者と実施した。 2020年11月に開催されたMSC102では、長年IMOにて議論が行われてきた船上揚貨装置のためのSOLAS条約改正案及びガイドライン案が原則承認された。 SSE7において設置されたアンカーハンドリングウィンチのためのガイドライン案の最終化のためのCGのコーディネータを当協会職員が担当した。 c) 係船設備 2020年11月に開催されたMSC102の係船設備関連議題の審議への対応の検討を国内関係者と実施した。 MSC102において、係船設備に関するSOLAS条約改正案及び関連ガイドライン案が採択・最終承認されたことから、当検討会はその役割を完了し、閉会した。 d) サイバーセキュリティ 舶用機器のサイバーレジリエンス向上を目的に舶用機器メーカーが企画、設計の段階で考慮すべきベースラインを定めたガイドラインを取り纏めた。これにより船社、造船所、舶用機器メーカー向けの対応が一通り終了したことから、本検討会はその役割を完了し、閉会した。 e) 燃料油の安全性 燃料油の安全性基準に関するコレスポンデンス・グループの報告書を含む、MSC102における燃料油の安全性に係わる審議への対応を国内関係者と実施した。 2020年11月に開催されたMSC102では、燃料油の安全性についての議論を次回MSC103に延期することが決定されたことから、国内関係者と協議した我が国対処方針に基づき、MSC103に文書を提出した。 2 情報の発信等 2.1 セミナーの開催 調査研究の成果及びIMOの動向の公表のため「船舶基準セミナー」をWEBで開催した。 a) 開催日・場所 2020年9月17日(木) 赤坂インターシティコンファレンス b) テーマ「~国際海運のゼロエミッション実現に向けて~」 c) 参加者 約250名 2.2 ホームページ及びメールでの情報提供 賛助会員への情報提供として、IMO各委員会・小委員会の報告、セミナーの開催案内及び報告等メールニュースを発信して、迅速な情報提供に努めた。また、必要に応じてホームページにも掲載した。 2.3 国際会議等への出席 作成された基準案等の趣旨説明を図るために次のIMO等の会議に出席(WEB開催)し、IMOへの提出文書一覧に記載の提案文書について説明と理解に努めるとともに関係各国及び関係機関との意見交換及び情報の収集を行った。 【出席したIMO会議】 括弧内は当協会職員数(WEB開催) 1 第16回 IMO/ITU合同専門家会合(コレスポンデンス形式)2020年7月31日~9月18日 1名(1名) 2 第124回理事会(C124) 2020年10月12日~14日 1名(1名) 3 第102回海上安全委員会(MSC102) 2020年11月4日~11日 3名(2名) 4 第75回海洋環境保護委員会(MEPC75) 2020年11月16日~20日 8名(3名) 6 第8回汚染防止対応小委員会(PPR8) 2021年3月22日~26日 3名(2名) |
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