事業成果物名

平成18年度の離島学校公演

団体名

事業成果物概要

離島の小中学校における芸術・芸能公演とワークショップ

 【はじめに】
  九州には多くの離島がある。離島は領海の確保や水産物の供給において重要であるが、歴史的、文化的にも大きな役割を果たしてきた。
  特に九州においてその役割は顕著であった。空海、最澄時代の遣唐使船の寄港地として、元寇、朝鮮出兵、日露戦争の前線基地として、また鉄砲伝来、キリスト教布教と弾圧、南蛮貿易など対外文化交易の拠点として活躍した。
 近年では海底炭鉱が開発され離島が基地となり、多くの労働者が移住し大変華やかな時代もあった。
 しかし、石炭ブームも去り、産業にかげりが見え始めると、労働者が減り、それにともない出生率も低下して、高齢者率が高くなるという、現在の縮図を早くから醸し出していた。
 その中で生を受けた子供達は都会に生まれた子供に比し、生まれながらに文化・文明的にみてハンディキャップを負っている気がする。
 都会では交通網が発達し、コンサートホールや映画館、美術館などの文化施設も充実していて、いつもどこかでイベントが行われている。子供達は自分が観たいものを選択することができる。 それに比べ、離島では文化施設がある所は稀で、子供達はコンサートを聴きたいと思った時は、日に何便かの定期船にのり、更に港から会場までの交通機関を必要とする。しかもイベントが夜の場合、すでに帰りの船はなく、宿泊しなければならない。
 この状況を考えると、よほどのことがない限り島の子供達が生の芸術や芸能に触れる機会はないであろう。

【日本財団に助成申請】
 そこで当協会では、離島の子供達に生の芸術・芸能を届ける「芸術宅配便」を考え、平成17年10月日本財団に助成申請した。運良く申請は受理され平成18年4月より「離島の小中学校における芸術・芸能公演とワークショップ」として実施することになった。

平成18年度実施概要
  
1.福岡県新宮町 相島  
 平成18年7月6日  相島小中学校  小学生13名 中学生3名
 【実施内容】三味線、琴、尺八演奏と体験ワークショップ

 相島は黒田藩時代に朝鮮通信史500名を接待した島であり、その跡地が残っている。民家の玄関口には1年中注連飾りが飾ってある。これは自分の家は神道でありキリシタンでないということを表す昔からの風習であると聞いた。 学校公演では尺八奏者が用意したビニールの水道管を加工した尺八を使い生徒、先生、保護者で演奏した。

2.長崎県対馬市 対馬
 平成18年7月11日  東小学校    小学生67名
     〃        大船越小学校  小学生113名
 平成19年1月16日  鶏知中学校   中学生161名
     〃        阿連小・今里小・金田小合同 小学生 計97名
 【実施内容】日本の歌とクラシック

 福岡から110Km、韓国から48Kmと日本より韓国に近い対馬は、元寇、朝鮮出兵、日露戦争の最前線基地として使われた国境の島である。 江戸期には秀吉の朝鮮出兵のため途絶えた国交を回復するため、藩主宗氏が尽力して国交を回復することができた。通信史は江戸期を通じて計12回行われた。対馬には年間40,000人が韓国から観光に訪れる。
 クラシック演奏と日本の四季の歌を全員で合唱、バイオリンの演奏体験など行った。

3.長崎県壱岐市 壱岐島
 平成18年7月12日  盈小学校    小学生400名
     〃        箱崎中学校   中学生91名
 平成18年7月13日  初山小学校   小学生64名
     〃        勝本中学校   中学生147名
 【実施内容】江戸文化「落語」と「大道芸」

 壱岐島は福岡市の博多埠頭から高速艇で1時間の距離であるが、行政区域は長崎県に属する。島全体が平たく、漁業の他にも農業、畜産も行なわれ、松坂牛をはじめ有名なブランド牛の生産地でもある。古代から人が住んでいた遺蹟が多くあり「原の辻遺蹟」は全国的にも有名である。  公演では子供達に大道芸の「南京玉すだれ」を体験させた。

4.福岡市西区 玄界島
 平成18年9月6日  玄界小・中学校  49名
   ※於:住吉神社能楽殿
 【実施内容】大蔵流狂言 実演と解説

  平成17年3月20日に発生した「福岡西方沖地震」により、学校が壊滅状態になって、市内の小中学校へ避難していた子供達を住吉神社能楽殿に 集め「狂言公演」を行った。
  離島に行っての公演ではないが、子供達が大変な状況の中で、伝統芸能に触れ、少しでも郷土の歴史・文化に興味をもってもらえればと実施した。
 また、会場の住吉能楽殿は築100年を越す伝統ある能楽堂で、このような文化財のない島の子供達に大きなインパクトを与えることができたのではないだろうか。子供達が重要文化財の中を走り回っているのが印象的であった。

5.福岡県糸島郡 姫島
 平成18年10月12日  姫島小中学校 小学生15名 中学生17名
 【実施内容】大蔵流狂言 実演と解説

  特に特徴のない島である。牡蠣で有名な岐志港から20分たらずにある姫島は、幕末に勤皇派の野村望東尼が志士を匿ったことで流刑となった島として有名である。のちに高杉晋作などが救出した。望東尼が幽閉された牢屋のあとがある。  姫島小学校は木造で、放射状に校舎が配置された素晴らしい現代建築 の学校。とても小さな島の学校とは思えない。
  狂言の所作や声の出し方を練習した。

6.福岡県宗像市 大島
 平成18年11月15日  大島小中学校 小学生31名 中学生22名
 【実施内容】日本の歌とクラシック

 大島には宗像三女神のうち、湍津姫神(たぎつひめのかみ)を祀る中津宮がある。ちなみに田心姫神を祀る沖津宮、市杵嶋姫神を祀る辺津宮を合わせて 宗像神社といい、世界遺産暫定リスト入りしている。 クラシック演奏と日本の四季の歌を全員で合唱、バイオリンの演奏体験など行った。


7.福岡県宗像市 地島(じのしま)
 平成18年12月7日  地島小学校 小学生11名
 【実施内容】津軽三味線

 過疎化が進む島である。比較的大きな島で、集落が2ヶ所あるが、学校は1つしかない。しかも中学校はない。小学校を卒業すると本土へ通学しないといけない。
 小学生11名のうち6名は漁村留学生で、受け入れるコミュニティセンターがある。
 島には藪椿が群生し、2~3月に「つばき祭り」が行われ、島外から観光客を招いたり、椿油の生産で新しい事業展開を考えている。 小学校の先生が「三線」を取り入れ、生徒全員が演奏できる。津軽三味線奏者との合同演奏も行った。


 以上が平成18年度の取組みである。
 
 九州には(沖縄県を除く)小学校以上の学校がある島が約70島ある。一年目の実施である程度要領がつかめ、できるならば全70島の学校で公演を行ってみたいものである。 

助成機関

  • 日本財団

事業成果物種類

報告書

事業成果物

事業成果物名

過疎化に立ち向かう島“小値賀”」

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