平成2年長男が重度の知的障害をもって生まれる。何に興味があるのか模索しながらの療育の中、馬と出会う。乗馬療法・馬とのふれあい・馬を介在した青少年育成の団体の存在を知り、活動に参加。その後地元でもボランティア組織を立ち上げ、平成11年、上越初の障害者乗馬体験交流会「ポニーカーニバル」を開催する。述べ参加市民は上越市長をはじめ、150名のボランティアスタッフ、乗馬体験に参加した障害者100名とその家族、総勢1000人近い一大イベントとして注目を浴びた。その後も毎年、寄付を募り、助成金を申請しながら活動を広げ、平成17年3月にはNPO法人格を取得。地元大手企業20社から建設費の協力を得て、郊外に常設のポニー牧場を建設。企業会員100社、正会員60名、賛助会員100名と、大型の馬、ミニチュアポニーとヤギの計7頭まで飼育する団体となった。土地の利用期限が終了となった平成22年7月に牧場は閉鎖、翌年6月まで引き続き理事長として法人を運営する。「障害のあるなしに関わらず、誰もが地域で豊かに暮らす」を理念とし、馬を借りてイベントの開催や慰問など、障害者だけでなく、お年寄りや子どもたちのための活動にも積極的に取組む。年間延べ人数にしてボランティアは1000名、参加者は市内外を問わず広く県内から延べ2000人にも及んだ。平成24年4月には関東国税庁長官より新潟県で4番めとなる認定NPO法人格を取得する。現在NPOは障害者就労移行支援事業を展開している。
　平成23年1月に農水産物乾燥加工施設「土の香工房cotocoto」を自宅脇に建設し、個人として起業。NPOでの経験を活かし、障害者雇用に取り組む企業として工房を立ち上げ、2名の障害者と1名の職員とともにスタート。現在は福祉施設に通っていた長男も加わり、精神障害のある青年1名、パートスタッフ3名の計6名で日々作業に取り組んでいる。また市内の障害者支援センターの依頼を受け、実習生も年間10名～15名を受け入れている。自宅前の3反歩の自家農園では、上越特産野菜のバナナカボチャやハーブなどを無農薬栽培し、粉末やペーストに加工して、地元の洋菓子店やパン屋に販売している。当工房のセラミックを搭載した大型乾燥機による乾燥は、遠赤外線による低温乾燥で酵素を壊さず、こだわりの食材を活かした乾燥品として販売している。自家農園で栽培した無農薬バジルの粉末を使った塩糀は、平成25年度、上越市が認証する「メイド・イン上越」の第1号を取得。今年度も姉妹品である新潟県の特産の「かんずり」を仕込んだ塩糀が「メイド・イン上越」を取得することができた。水産物では上越近郊でしか水揚げされない「メギス」（正式名称はニギス）の乾燥を製造し販売している。これは船上で廃棄されてしまう未利用魚の新たな活用ということで、地元水産漁業者や上越の食を考える会と共同開発したもので、当工房で魚醤に漬け乾燥したもの。焼かずにそのまま骨ごと食べられるということで、幅広い年代に好評。上越の新たなお土産として道の駅やネクスコ東日本SAで販売されている。
平成27年1月には一般社団法人を取得。障害者就労継続支援事業を本年4月1日に開始予定。事業所名をソーシャルファーム ドリーと緑の風とする。

これまで個人事業として「土の香工房cotocoto」で行ってきた農水産物加工・販売事業を、「一般社団法人土の香工房」として行う。
事業主「一般社団法人 土の香工房」の事業所「ソーシャルファーム ドリーと緑の風」は、障害者就労継続支援A型事業により、障害者・高齢者や支援を必要とする者を雇用し、下記のような作業を行う。
＊自然栽培による福祉農園での、農産物の栽培：自家農園及び、近隣の農業者の農地やハウスを使って、加工原料となる農産物を栽培する。
＊自家農園で収穫した農産物、および購入した農産物の、大型乾燥機による乾燥加工、製粉加工、ペースト加工等を行う。
＊加工品を梱包し、土の香工房cotocotoの自社ブランド商品として卸す。
＊農家などより委託を受けた農産物の加工を行う。

NPO法人運営時から抱いていたビジョン：「障害のあるなしにかかわらず、誰もが心ゆたかにくらせる地域社会」の実現
障害者自立支援法制定に伴い、障害者への支援は充実したが、現状はまだまだ雇用の場が少なく、労働市場では不利な立場にある人が多いのが現状。その受け皿として上越地域で初めての就労継続支援A型事業をスタートさせた。
これまで個人事業で基盤を作ってきた、加工~販売の分野の拡大がはかれることはもちろんのことだが、今回のA型事業参入で農業部門の充実が見込める。
土に触れるという作業は精神安定につながり、障害を持つ者にとっての作業としてふさわしい。
自然栽培を続けてきた自家農園では加工原料となる野菜やハーブを栽培し、これまでも加工して自社製品として使用してきたが、その生産の増大をはかり生産量を安定させていきたい。近隣の農家より協働を提案され、農業についての知識の習得ができることや、農地やハウスを使用させてもらえることで、作業場‥作業内容の拡大を見込みたい。また、加工技術や商品開発に関してのアイディアなどの情報を交換することで、地域の活性化にもつなげていきたい。
これからは協働の時代。自分もいい、人もいい、みんなもいい。この考え方をベースに、障害者自身もいい、商品を手にするお客様もいい、地域もよくなる。をめざしていく。

近隣の農業者と連携し、農地での収穫作業から乾燥加工までを行うことで、農業に関する知識の習得ができ、新しい活用方法を提供することができている。
地域の農業者が生産する特産野菜の利用方法として、乾燥加工や製粉などの加工方法を提案することで、新たな製品の開発につなげる。
隣県果樹栽培農家と連携し、乾燥加工や製粉加工、ペースト加工などをすることで、規格外品の新たな利用方法を見出す。
市内漁業関係者（漁師・水産加工会社）との連携により、未利用魚を使っての商品開発。

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