事業成果物名 |
2013年度 遠隔技術を利用した情報保障支援者の育成および全国ネットワークの構築
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団体名 |
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事業成果物概要 |
近年、通常学級に通う聴覚障害児が増えている。
理由としては、新生児スクリーニングの普及により聴覚障害の早期発見・早期教育が可能となり乳幼児期より人工内耳の装着率が増えたことが挙げられる。 それに従って聴覚障害児が音を聞いて音声で発話することが、新生児スクリーニングや人工内耳の普及以前よりもスムーズになった。 では、通常学校・通常学級において健聴児たちの中で学んでいく聴覚障害児に対しての支援は、きちんとされているのか?―というと、残念ながら充分ではないという現状がある。 通常、聴覚障害者に必要な支援は主に ・手話通訳 ・ノートテイク(手書き要約筆記) ・パソコンテイク(パソコン要約筆記・パソコン文字通訳) という方法で行われる、音声情報を目で見て理解出来る形にする「情報保障」が必要不可欠である。 これは50年60年と長い年月をかけ、社会・司法・政治・メディアなど多くの人を巻き込んだ、ろうあ運動・難聴者運動により制度化されてきた。 現在はどの自治体・企業でも申請すると手話通訳・要約筆記を受けることが可能となってきている。 聴覚障害者は、情報保障があってはじめて社会のなかで責任・義務を負った「社会人」として自立した生活が出来るのである。 ところが、教育現場で情報保障がされるようになったのは1990年代からと歴史がとても浅い。それも大学・専門学校においてのみであった。 現在の日本の大学では、障害学生支援として支援者を学内外から集め、技術・支援時間に見合った賃金を支払い、情報保障に関しては要約筆記・手話通訳・情報保障機器(主に遠隔情報保障システム・音声認識システム)の技術向上に日進月歩して行われているところが少なくない。 これは聴覚障害者の進学率向上に伴い、当事者学生・支援者の「学内での情報保障を求める運動」の賜物といえる。 大学・専門学校の学内における情報保障の制度化は、まだ始まったばかりである。とはいえ、それによって聴覚障害学生は自分のやりたい学問を志す事、なりたい職業に就くことが可能になり、その幅もぐんと確実に広がり続けている。 では、特段将来の仕事や資格に直結する専門的なことを学ぶわけではない小学校~高等学校には情報保障は必要ないかというと、それは全く違うと言わな ければいけない。 小学校・中学校はコミュニケーションによる人間形成にとても重要な時期であるからこそ、校内・教室内での様々な情報に取り残されないようにしなければならないし、授業面でも年齢に相応しい学力をつけさせるためには、情報保障は欠かせない。 高等学校においても、普通科はもちろん商業系・工業系・園芸系・福祉・などの専門学科が置かれているのであれば、その尚更「学び」を保障しなければならない。そのうえで必要なのは、やはり情報保障である。 にもかかわらず現状を見ると、小学校・中学校での聴覚障害児に対しては「自分の耳で聞く」「助け合いの精神で周りの児童生徒が教える」「支援員の教員が隣席で先生の喋っている事を書く」「授業でやることを細かく書いたプリントを配る」という、最低限の対応しか行われていないところが多い。 そのため、授業の内容に興味が持てない、クラスメイトに負担をかけているかもしれない、自分だけ特別扱いを受けなければいけないのかという聴覚障害児自身の心理的負担や周囲の無理解によるいじめ・本人の孤立・学力定着の阻害が生じてしまう場合がある。 高等学校に関しては上記の事も含めて、「義務教育ではないので特別扱いは出来ない」と学ぶ場であるはずの学校が、「学びたい」という意欲をつぶしてしまっている。 音声情報を、見て理解出来る形に変える情報保障、これは聴覚障害者の生涯あらゆる場面で行われるべきであり、その技術も経験や学習を積み、技術の高い者が支援するべきである。 聴覚障害当事者側も自立した社会人として生活するためには、幼いころから情報保障が付いているという状況を経験し、社会に出て手話通訳・要約筆記を筆頭にさまざまな方法を模索・支援者と切磋琢磨して情報保障の地位・技術向上に関わらなければいけない。 大学・専門学校において情報保障が制度として行われている今、次は小学校~高等学校への情報保障の制度化に向けて歩きだしていくべきではないだろうか。 本書は通常学校・通常学級で学んでいた経験のある成人聴覚障害者の体験手記を記載していく。 聴覚障害児・保護者・学校の先生方の参考にしていただき、小学校・中学校・高等学校に通う聴覚障害児に対して情報保障をつける意義を検討していく材料として考えていっていただきたい。 <目 次> Tさん(兵庫県) 1-10ページ Sさん(長野県) 11-15ページ 藤原宏樹さん(愛知県) 16-18ページ Nさん(長野県) 19-33ページ 吉原和香奈さん(東京都) 34-41ページ まとめ 42ページ 終わりに 43ページ |
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助成機関 |
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事業成果物種類 |
冊子
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事業成果物 |
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