事業成果物名

欧州造船業の官公庁船市場への取組方策に関する調査

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事業成果物概要

【はじめに】
 欧州造船業はこれまで、「建造量」ではなく、「付加価値」の観点から事業運営戦略を描いてきており、この考えは基本的に変わっていない。すなわち、商船建造を一定のベースワークロードとしつつも、クルーズ船、オフショア船・官公庁船(艦艇含む)など高付加価値である特定船舶の建造分野において圧倒的な優位性とシェア・雇用を今後とも維持していくことを念頭に事業展開を図るとの主張が欧州業界から発信され続けている。
 しかしながら、世界の造船市場は、2008年秋の金融危機以後、新造船発注は停滞し、豊富な手持工事量も減少に転じるとともに、既存契約のキャンセル・納期遅延・契約条件再交渉が増加している。海事コンサルタントの中には、2010年・11年引渡船舶のうち25%超がキャンセルになるものと考えているところもある。このような状況が続けば、世界の造船業には再度、構造的不況期が到来するおそれも極めて高い。
 このように一層の厳しさを増す競争環境の中で、欧州では、本格的な不況到来を前に造船所立地売却、新造船建造事業の閉鎖も始まった。例えば、欧州造船業で売上3位のティッセンクルップ(ドイツ)は、造船事業を再編し、官公庁(艦艇事業含む)への集中と、それ以外の事業の売却・縮小方針を決定した。また、英国においても、防衛産業大手であるBAE がVT Shipbuilding と合弁し、英国造船業全体として官公庁船・艦艇建造分野への依存度を一層高めている。
 一方、欧州造船業の官公庁船建造分野については、その製品である軽量快速船等については、品質の面で第一級と世界的に認識されている。しかしながら、防衛費等国家予算の大幅な削減に伴い、欧州造船業にとって、欧州域内の官公庁船市場だけでは企業として存続しうる必要な生産量を維持し持続性を確保することは困難であり、近年、欧州圏外諸国への官公庁船輸出の重要性が増してきている。
 我が国造船業も、今後とも引き続き世界の造船市場において競争力を維持し代表産業として安定的な操業を確保していくためには、商船建造分野での一定のシェア獲得は不可欠であるものの、その一方で、商船建造に大きく依存するだけではなく、欧州造船業のような官公庁船・艦艇分野への進出強化方策も検討を開始することが重要である。したがって、今般、欧州造船業の官公庁船市場への取組み方策の現状と今後の見込みを調査することを通じて、我が国造船業の今後の経営戦略立案検討の一助とするものである。

ジャパン・シップ・センター

【目次】
1 欧州商船建造造船所の竣工量と国内発注の現状
2 欧州艦船建造量、国内契約及び輸出契約の現状
3 欧州海軍装備産業の概要
4 欧州主要5カ国の艦船建造産業の現状と見通し
5 欧州造船・艦船建造産業の今後の見通し

助成機関

事業成果物種類

報告書

事業成果物

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欧州造船業の官公庁船市場への取組方策に関する調査

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