事業成果物名

東南アジアの海上輸送能力確保のための支援策調査

団体名

事業成果物概要

【はじめに】
 近年、東南アジアにおけるエネルギー安定供給の確保は国全体の経済や貿易に大きな影響を与え、輸送の大半を担う海上輸送の整備が国のセキュリテイーや環境保全の面で喫緊の課題となっている。例えば、タイ国には3,210キロに及ぶ長大な海岸線と4,000キロの内水路があり、エネルギー海上輸送はLPG船を含む国内沿岸輸送タンカー258隻(500DWT以上:Marine Department資料)で輸送されている。石油消費量の増加に伴いタンカーの隻数は年々増加しているが、主として日本からの中古船調達に依存し、船齢20年以上の船舶が全体の85%、25年以上が61%を占め、平均船齢24年の老朽タンカーが運航されており、その近代化が求められている。
 タンカーに関しては、平成14年11月にスペイン沖で発生した油タンカー「プレステージ号」の大規模油流出事故を契機に、平成15年12月、国際海事機関(IMO)において衝突や座礁等の事故時にも貨物油の流出を防止できるダブルハルタンカーの導入促進等を内容とする海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の改正が採択され、平成17年4月5日に発効したが、これにより600DWT以上5,000DWT未満の小型タンカーについても、2008年以降シングルハルタンカーでの重質油輸送が原則禁止となっている。これらの規制は、精製油(白油)を運ぶいわゆる「白油タンカー」には強制適用されないが、海洋環境保全に配慮する多くの荷主企業、オペレーター等は白油タンカーにもダブルハル構造を要求するケースが増加しており、タイ国においてもその要望は高まっている。
 タイ国造船業は200余りの造船所からなるが、多くはチャヤプラヤ川沿いに立地し、立地条件より建造能力にも限界があり、また、タンカーの建造経験の乏しい中小規模経営企業が殆どである。タイ国海運を支える造船業振興の為、政府が中心となり海事産業振興(海運、造船、港湾、船員)の為の6つの戦略委員会を立ち上げた。造船振興に関しては工業省が中心となり、造船工業会、大学と連携し、造船業振興のマスタープラン作成、造船工業団地建設調査、造船関連産業育成、造船経営セミナー開催等の検討を開始し、特に国のセキュリテイーと環境保全の観点から国内需要の高い小型タンカー建造を第一目標として、最適な建造スキームの構築が求められている。
 一方、インドネシアにおいても、インドネシア船籍船の船腹量は2002年から年々増加傾向にあるが、これに伴い、船齢も徐々に高くなっており、平均船齢21年、原油・プロダクト・ケミカル等タンカーにおいては24~28年と老朽化が進んでおり、東南アジアの他の国々でも同様な傾向が見られる。
 本調査は、このような状況を踏まえ、東南アジアにおけるエネルギー輸送の実情とそれを担う船舶の近代化に伴う建造需要を調査し、東南アジアの海運・造船業の発展につながる我が国の技術支援と経済協力のあり方を検討することにより、老朽化船の代替建造促進による東南アジアでの海上輸送における安全性の向上及び環境保全に資するとともに、東南アジア経済の発展に寄与することを目的として行ったものであり、本調査の結果が、タイ国海運・造船業の発展、ひいてはタイ国経済の発展のための一助として寄与することを期待するものである。

ジェトロ・シンガポールセンター船舶部
(社団法人日本中小型造船工業会共同事務所)
ディレクター 矢頭 康彦

【目次】
1.タイ経済概況
2.石油産業
3. タイ運輸省海事局(Marine Department)
4.工業省
5.タイ石油輸送
6.タンカー近代化計画
資料1.タイ船主協会会員リスト
資料2.タイ船主協会会員船舶リスト

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東南アジアの海上輸送能力確保のための支援策調査

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