事業成果物名

2012年度 大地震および大津波来襲時の安全対策に関する調査研究

団体名

事業成果物概要

 本調査研究は、東日本大震災を受けて2011年度に日本海難防止協会が実施したアンケート・ヒアリング調査「大地震および大津波来襲時の航行安全対策調査(津波影響による船舶避難行動と被災状況等に係る基礎調査)」等の結果をもとに、これまでの津波対策や航行安全対策の見直し、検討を行い、今後想定される大地震発生時あるいは大津波来襲時における船舶被害の未然防止及び被害の局限化に資することを目的としている。
 2012年度においては、2011年度のアンケート調査結果等を踏まえて、現行の津波 安全対策や航行安全対策で見直しが必要な内容について抽出・整理すると共に、モデル港である清水港において港内状況調査、津波シミュレーションを行った。これらをもとに、津波来襲時に清水港内で取り得る対応策の検討、大型危険物積載船の係留限界評価を行い対応について課題を整理した。
 なお、津波シミュレーションにおいて、使用した港湾施設などのデータについて指摘を受け、より実際的な津波シミュレーションを行うため、使用データを換えてやり直すことになり5月31日まで事業延長した。
① 東日本大震災における被災船舶へのヒアリング、アンケート調査を行ったところ、地震直後の停電による電源喪失、電話回線の混雑による連絡不能という二大障害が発生し、これにより荷役設備の切り離しが出来ず緊急離桟の障害になった事例、電話とFAXが使えず船陸間の連絡が取れなかった事例などが生じた。
現行の津波対策、航行安全対策においては、津波災害の防止措置についての関係法令、関係行政機関等による地震・津波情報等の伝達及び船舶津波対策を調査したところ、各行政機関とも東日本大震災の教訓を踏まえ津波対策を検討しており、気象庁の津波警報等の情報文の改善をはじめ、携帯電話会社による緊急速報「エリアメール」の配信の導入、市町村によるMCA無線を用いた一斉通信の導入が行われている。
東日本大震災における被災船舶へのヒアリング・アンケート調査及びこれまでの関係者からのヒアリング調査等をもとに、現行の津波対策、航行安全対策で見直しが必要と思われる事項について抽出したところ、桟橋設備の電源確保、船舶との通信手段の確保、津波警報及び避難勧告の確実な伝達ができない場合の事前の取決め、避難判断における事前の取決めとともに、伝達手段の多重化を図る上で、衛星携帯電話、MCA無線を整備する必要があると本委員会としての考えが示された。
② これまでの津波対策の検討経緯や地元関係者の協力を踏まえ、2003年度の研究に続き今回も清水港をモデル港として選定し検討することとした。静岡県は、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域に指定されており、東海地震が予知されることを前提とした「清水港地震災害対策マニュアル」を作成しているとともに、東海地震の予知型以外の突発的な災害に対応するための海事・港湾関係者で構成される「清水港台風・津波対策協議会」を設置している。また、清水港においては、現在、津波注意報または津波警報(津波・大津波)発表時をもって、港長から勧告が発せられたものとし、係留強化や港外退避などの所要の対応を取る旨の事前取決めを行っている。
南海トラフの巨大地震については、中央防災会議において、東日本大震災の教訓を踏まえた新しい考え方、すなわち、津波地震や広域破壊メカニズムなど、あらゆる可能性を考慮した最大クラスのものとして推計されている。これらの中で検討されている津波断層モデル11ケースのうち、静岡市清水区で最大となるケース⑧(10.9m)を想定地震断層モデルとして採用し津波シミュレーションを実施した。
大型危険物積載船舶については、仮想桟橋を設定し30万DWTのVLCC及び21万㎥級メンブレン型LNG船の係留動揺シミュレーションを行い、流速3.3ノット津波波高2.5mで係留索が破断することが判明した。
③ 見直しが必要な津波対策・航行安全対策、清水港内における状況調査及び津波シミュレーションを踏まえて、清水港内で取り得る対応策について検討した。今回の津波シミュレーション結果を踏まえれば、大型船は荷役停止から緊急離桟開始までに30分から60分程度かかることから、大型船、中型船は緊急離桟し港外退避することは困難と思われる。大型船、中型船の初動対応は、係留強化して津波に備えることが望ましい。なお、津波により係留索が切断され船体漂流することも考えられることから、着岸時においては常に主機関の起動及び投錨の準備をしておく必要がある。
④ 今年度の検討を踏まえ、今後、モデル港内に在泊している船舶の船長が、大地震発生時或いは大津波来襲時に執るべき最善の方策を検討する上で、一般船舶も含めた係留限界及び錨泊限界の調査等を行う必要がある。また、これらの検討に併せ、船舶避難時における対応策、大型危険物積載船の安全対策及び港内津波対策検討の手引き(2003年度「津波が予想される場合の船舶安全確保に関する調査研究報告書」)の見直しなどを検討することとしている。

助成機関

事業成果物種類

報告書

事業成果物

事業成果物名

大地震及び大津波来襲時の航行安全対策に関する調査研究報告書

URL

事業成果物名

大震災および大津波来襲時の航行安全対策に関する調査研究

URL

  • 戻る