本を巡るトークライブ、とりあげるのは、石塚尊俊『神去来』です。
　あなたはカラサデ婆のことを知っていますか。案内人は小学校の頃、全校朝礼で教頭先生から聞かされました。
「今晩は出雲に集まられた神さまが宴をしてお帰りになる日です。神さまが出歩かれますから、早く寝るように。そして夜、トイレに行ってはいけません。カラサデ婆さんにお尻をなでられますよ。どかないと、どうなるか……」
　出雲に全国の神が集うという祭事の終幕、神立の祭にまつわるトピックです。
　
　さて、その出雲の神在祭、かつて柳田国男は何度も痛烈に批判しました。「まことにたわいのない俗説」「論破するまでもない」「不道徳である」（「祭日考〜出雲のいわゆる神在祭」）。
　対するものとして、佐太神社宮司であった朝山晧の研究がありますが、柳田と朝山は、すれちがうように亡くなり、双方をよく理解する石塚尊俊によって、「結局この問題は、その後いつとはなしに民俗学会のいわば表舞台から消えていくことになったのである」と記されることとなります。

　今回、カラサデ婆を糸口にこの問題を見直します。すなわち「今、神はどこにいるのか」ということです。